|

母のダイヤモンドのついたプラチナの婚約指輪は、私が幼稚園生の頃、はめさせてもらったまま、スイカを食べ、スイカと一緒に捨ててしまったらしい。
次にやんちゃな私がねらったのは、母の結婚指輪だった。繊細な彫り物が施されたプラチナ・ジュエリーは、幼心にもときめいたものだ。でも、スイカ事件で前科のある私の前で、母は指輪をそう簡単にははずしてくれなかった。

そんな気になる結婚指輪が、いつの日からか、母の指から消えた。指輪にも賞味期限があるの?と、母に訊いた。「飽きた?壊れた?」母は笑って答えた。「そう簡単に壊れっこないわ。プラチナ製だもの。今も気に入ってるけどね、年を重ねて指にきつくなってしまったの。」
ほら、小指になら今もぴったり、と、久しぶりにケースから出して、母が誇らしげに見せてくれた指輪は、あれから30年近くも経つというのに、驚くほどまぶしく、変わらない輝きを放っていた。
|